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(古泉とキョン)/うそつきにばら


 愛しい愛しい彼がいつになく穏やかな顔をしていらっしゃったので何か良いことがあったのだろうと察した僕は同じように笑顔を浮かべ「何かいいことがあったんですか?」と問いかけたのですがそれに対する彼の返答は「俺と機関どっちが大事?」という想像もしなかった言葉であり勿論彼のことを心の底から大切に思う僕は一もなく二もなくあなたに決まっているじゃないですかと口にしたのですが次に彼からやってきたのは照れた笑顔でも恥ずかしがって頬を染める顔でもばかっだなんて語尾の跳ね上がった声でもなんでもなく勢いのついた拳でした。

「自分の立場を忘れんな」

 わけがわからずあっけに取られて殴られた左頬をおさえぽかんと口を開け彼を見返した僕に彼は泣きそうな顔を作ってお前が大事にしなきゃいけないのは俺じゃないだろうと呟いたので僕は自分の胸に手を当てて帰るべき機関を思い浮かべましたが結局やはり大切なのは彼であったのでやっぱり僕はあなたが大事ですと口にしました。

「ばかやろう」

 かえってきた彼の言葉は語尾が跳ね上がってました。まる。


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(古泉とキョン)/うそつきにばら


キスしたい。すごくしたい。ああもう嫌になってきた。自殺したい。俺は今情緒不安定なのだ。情緒不安定で、ちょっとした欝で、頭のどこかの回路がぷつんと切れてしまっているのだ。だから俺は何もおかしくない何も悪くない何も違わない。キスしたい、目の前の男に。何も間違っていない。
ああどうして、こいつの唇はこんなに柔らかそうで、それでいてかさかさしてそうで、吸ったら甘そうなんだろう。おかしい。俺がおかしい。もういっそ泣きたいくらい。今車に乗ったら走行中に飛び降りてしまいそうな妙な自信がある。目の前を馬が走っていたら飛び込んでしまいたくなるような妙な自信がある。ああキスしたい、どうしてこんなにキスしたい。
なんでもないように俺を見るなよ。俺は視線をそらす。お前に見られるとどうしてもキスしたくてたまらなくなるんだ。目の前にあったペットボトルを引っつかんで口に押し付ける。これでかわりにならないか。
ならなかった。水分が喉を通過して、唇が妙な感覚に襲われただけだった。寧ろキスしたい気持ちが増大した。かたいプラスチックの部分は俺のやわい唇をふにゃりと押しつぶし、本当の人間ならもっとやわらかいんですよといらんアピールをしてきたのだ。ああ苦しい。これが古泉の唇だったら。
キスしたいよ。呟けない。泣いたら気付いてくれるだろうか。人差し指で口を覆った。

 
(ハルヒと古泉)/うそつきにばら


どうしてキョンがいるのかしら、と彼女が言った。それは、憎憎しいとかであったり、物悲しいとかであったり、そんなことはなく、ただ単に気になったから、疑問に思ったから、といった感じだった。
しかし彼女の言い方には激しく引っかかりを覚える。どうしているのかしら。まるでいなければよかったと前に言葉が引っ付きそうな勢い。いったい彼を何だと思っているんです、と言ってやろうかと思った。ああいけない、彼女は神様じゃないか。
どうしてそんなことを言うんです、とかわりに言った。彼女は言った。だって古泉くんはキョンが、キョンは古泉くんがいる限りあたしなんかを見てくれやしないでしょう。妹が生まれて構ってもらえなくなった兄みたいな口調だった。じゃあもしかしてあなたは僕に構って欲しいんですか、そう聞いた。
彼女は言った。そんなわけないじゃないの、キョンがあたしを見てくれないからつまんないのよと。ふぅん、知ってましたよ。ああそう。
(古泉とキョン)/スプーン


どうにもそいつが、もぞもぞと、ゆるゆると、落ち着かなくてせわしない、そんな動きをしていたものだから。おいどうした、何かあったのかと、俺なりに優しい声音で問いかけたつもりだった。
そいつは何も言わないままで、ほんの少し顔を赤らめただけで、俺の体をじいと見つめたり、俺の目に何かを訴えかけるように見つめたり、居心地がわるいみたいに、いごいごと肩を揺らした。
ツーカーの仲とかはよく言ったもんだが、さすがにこんな挙動不審じゃ何を言いたいのかはちっともわからんだろう。――と、言ってやるにはどうやら俺は経験をつみすぎたようだ。もじもじ、もぞもぞ、動くそいつに俺はなんとも言えない表情を向ける。掌をのばした。
したいのか。
その質問には語尾にかぶさる勢いで返答がなされた。したいんです。なんてわかりやすいやつなんだお前は、いっそ呆れてしまうぞ。ほてったような表情がこちらに近づいてくる。悪いもんでも食べたのか、と問いかけたくなるような、切なくて、苦しくて、もどかしそうな顔。落ち着けよ、俺は逃げたりしないから。そんなつもりで口をぱかりとあけてこれみよがしに舌を見せ付ける。おずおずと触れた温かい粘膜に、俺は数秒思案して、絡めた。

(古泉とキョン)/うそつきにばら


なんでもっとうそつきになってくれないんだろう。
ぐしゃぐしゃにされる体内の熱をまるで他人事みたいに感じながら、ひいはあと息を吐き出した。
なんでもっとうそをついてくれないんだろう。
もっとひどくしてもいいのに。もっとひどくして、きらいだって、言ってくれたらいいのに。どうして優しくなんかするんだ。どうしてすきですとか言うんだ。それじゃあ、だめだろう。ばれちまう。かみさまに、ばれちまうよ。

「・・・ぁ、いず・・・・・・み、も、っと」

俺のくちからこぼれるのも、ほんとうのことばかりで参るね。
ああだれか、俺たちのことを隠してくれないだろうか。うそつきになりたいのになれない午後の夜。

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